『エクソシスト 信じる者』

 

エクソシスト 信じる者』。かつて大地震で負傷した妊婦の妻か腹の中の子どもか、命の選択を迫られた男が主人公。彼の娘とその友人の娘が悪魔に憑かれる。過去の地震の一件で信仰を失っていた主人公は、近隣の教会の関係者、民間信仰者、悪罵祓い経験者など様々な信仰を持つ者と接触し、彼らと一緒に悪魔祓いをする決断をする。その際、チームの牽引役となるのは、過去の中絶経験を悔いている女性だ。

 ロー対ウェイド判決を覆し妊娠中絶を違憲とした現在のアメリカで、上記のような設定のホラーが作られた。少女たちの変貌を最初は医学的に解釈しようと試み、やがて悪魔憑きだと認めざるをえなくなる展開は、ウィリアム・ピーター・ブラッティの小説『エクソシスト』および1973年の同作の映画化を踏襲しており、正統的な続編といえる内容だ。そこで、出産をめぐる個人の判断の是非という今日的でもある問題が前景化される。

 ただ、映画では、神と悪魔の存在を認める点では共通するにしても、必ずしも信仰の内容が一致しない人々が共同で悪魔祓いを行う。命を落とす者も出るなかで、人と人のつながりを信じることの大切さが説かれる。人と人のつながりと宗教と、どちらを重視しているかは曖昧であり、中絶の罪悪感が語られているにせよ出産に関し個人が判断することの是非についても、作中で明確な判断は下されていないように思う。その意味では、共和党的でありながら民主党的なストーリーといえるかもしれない。

 観た時の居心地の悪さは、現在のアメリカの宗教、中絶をめぐる世論の揺れと軋みが反映された結果だろうか、などと思った。